「台風の波」羽伏•新島1981 台風が来ると、にわかにときめく私たちですが、確かに波が上がるのは私達にとってはエキサイティングな事ではあります。しかし、それが人の命や苦しみの上に成り立つものなら、私は躊躇してしまう。いや、若い頃は、かりそめにもそんな事は考えなかった。ただ、なにも考えず自然に対して、浅はかな挑戦をしていた。そこに何かの迷いがひそみ入る余地すらなかった。
 「それが、サーファーとして正しいと思っていた」
 年齢が加わり物事を冷静に考えられるようになると、波待ちの時、どこかで苦しんでいる人がいる事を考えるようになり、「お前、本当にそれでいいのか? 」と自問自答ようになった。
 やがて体力的にも自分なりの大波には乗れなくなった。そして今はもう、この不如意な足腰では、そのステージにすら行くこともできない。それでも「台風」と聞くと自然とテレビの画面に目がいってしまう。 

いつになっても、波は私に様々な事を問いかけてくる。